教授挨拶

弘前大学脳神経外科学講座 第4代教授
斉藤敦志

令和4年5月1日付で、脳神経外科学講座の教授を拝命致しました。私で4代目の教授であり、伝統ある講座を継承していくことに身の引き締まる思いです。

脳神経外科は比較的歴史が浅い分野ですが、未だ謎の多い脳を対象として、フロンティアに挑む探求心、手術技術の向上を目指した飽くなき努力、画像診断などの最先端技術を取り入れながら急速に発展している現在進行形の分野です。自身の技術と努力が患者さんの人生に大きく影響するとてもやりがいのある診療科であると自負しております。また、脳神経外科学は、脳血管障害、脳腫瘍、頭部外傷の外科治療を中心に救急医学や神経内科、循環器内科、小児科、内分泌内科やリハビリテーションなど広く境界領域をもち、近年の診療は多岐に渡っています。患者さんの搬送から手術まで、多くのスタッフや他科の医師との連携も大きく患者さんの転帰に影響しチーム医療の構築もとても重要になります。脳神経外科の診療を通して、自身の知識や技術に磨きをかけながら、チーム医療の一員としての社会性も磨くことで、仕事を通じて人間としての幅を広げ成長できる点も大きな魅力であると思います。

脳神経外科診療は治療技術の進歩とともに、その業務形態も整備され多様化し、これまでの長い手術に只管参加して修行を積むスタイルは過去のものとなりつつあります。血管内治療や機能的脳神経外科を含めたsubspeciality分野の充実と拡大から、脳外科診療の全てが手術や緊急対応中心ではなく、メスをもたない脳外科医としての生き方も模索できる時代になってきました。脳にdirectにapproachすることを共通としながら、脳外科医が臨床、研究の多方面で活躍できる場は広くなっています。幅広いbackgroundをもつ人たちと柔軟に楽しく、新しい脳神経外科を展開していきたいと思います。脳神経外科は、脳に興味をもつ若い力が輪に加わってくれることを待っています。

(令和4年5月1日 記)

教室の沿革


1972年(昭和47年) 10月、岩渕隆(故名誉教授)が初代教授に就任し、弘前大学医学部脳神経外科学講座が開設されました。翌昭和48年1月より診療が開始され、1月22日に第1例目の手術が行われています。開設当時5名であった教室員も漸増し、それに伴い診療、教育、研究の拡充が図られました。さらに県内地域医療に対応すべく関連病院においても脳神経外科の診療を開始し、現在の診療体制の基礎ができあがりました。

1994年4月より鈴木重晴(現名誉教授、青森市民病院長)が第2代教授に就任し、診療、教育、研究におけるさらなる発展が遂げられました。脳血管障害ではくも膜下出血に関し独自の治療法の開発に努め、その治療成績は世界トップレベルに達しています。また、脳腫瘍の分野においては悪性腫瘍に対する集学的治療の推進や深部脳腫瘍を安全に手術するための独自のモニタリング法の開発などを行い、臨床・研究面で大きな成果を上げています。さらにパーキンソン病を始めとする機能的脳神経外科、小児脳神経外科等さまざまな分野を創設・発展させてきました。また、国際化のために、多くの教室員が海外留学の経験を積む機会を得て、その知見をもとに教室の研究、臨床にさらなる飛躍がもたらされることに結びついています。

2004年2月より大熊洋揮(現弘前総合医療センター院長)が第3代教授に就任し、脳神経外科の全分野において高度先端医療が実践できる環境が整えられました。ゲノム研究や分子生物学的アプローチを駆使した脳腫瘍やくも膜下出血後の脳血管攣縮に関する研究は、世界レベルの成果を数多く残しました。海外留学も積極的に取り入れ教室員の視野を広げるとともに、津軽地域の脳神経外科診療の飛躍的な充実にも大きく貢献しました。

教室員紹介はこちら